(160) やはり野におけ蓮華草

阪本信子 会員 平家が戦うこともせず、あっけなく都を出て行ったことで、義仲は簡単に都に入ることができました。公称五万という大軍を従えての堂々の入京でした。 ここまでが義仲の花道で、それ以後の道は棘の道でした。 彼の率いる軍隊は人数こそ多いので…

(159) 神様でも時勢には勝てません

阪本信子 会員 盛者必衰は平家のみでなく、平家によって栄えていた者が共倒れになったのは当然です。 宇佐八幡宮もそれで、九州において平家が最も頼りにした大勢力でした。 大宮司宇佐公通をはじめ上層部は平家に協力したいのは山々でしたが、宇佐八幡宮の…

(158) 都を捨てた後悔先に立たず

阪本信子 会員 昔、緒方氏は宇佐八幡大宮司職を宇佐氏と争い、敗れたといういきさつがありました。 いらい、緒方氏は緒方荘を宇佐八幡宮に寄進し、その荘官として臣従していたのですが、この頃は緒方荘からの年貢、租税を宇佐八幡に収めず、主筋の宇佐八幡宮…

 ◇4月例会のご案内◇

演題 DNAは歴史を語る(その六)―日本人はどこから来たか― 日時 平成20年4月6日 (日) 13:30より 場所 兵庫県民会館 304号室 (JR・阪神「元町」駅山側、徒歩7分。地下鉄「県庁前」1-2出口) 参加費 500円(申し込み不要・自由参加) 主催 兵庫歴…

(157) 俺は偉いんだぞ!

阪本信子 会員 平家を九州から追い出した主戦力は緒方維義で、彼は「恐ろしき者の末なり」といわれていた。 彼の先祖大神維基は、高千穂大明神(蛇の化身)が身分高い男に姿を変え、長者の娘に通って生まれた子であり、その末裔が緒方荘に在住して大神姓から…

(156) 清盛の贔屓が生んだ格差

阪本信子 会員 清盛は平家の経済基盤である日宋貿易の拠点である九州に副都構想をもっており、現地武士を組織し、特に膨大な所領を持つ宇佐八幡宮の大宮司公通とは親密な関係を持っていました。 つまりこの地方で力を持っている者達は、ほとんど清盛によって…

(155) 上昇は長期、下落は短期

阪本信子 会員 平家の落ち行く先は九州です。たしかに昔は良かった。 しかし、清盛亡き後どんなに変わったか、現地から帰った貞能の現地調査報告も無視した、というより此処しか思いつかず、無視せざるを得なかった平家の選択を、ノーテンキだとか、想像力欠…

◇『平家物語』講座案内 2008年度◇ 主 催 兵庫歴史研究会 講 師 阪本信子 兵庫歴史研究会副会長 会 場 兵庫県民会館1202号室(変更あり) 開催日時 毎月第3土曜日 13:30〜15:00(8月、12月はお休み) 平成20年 4月19日、5月17日、6月21日、7月19日、8月…

 ◇3月例会のご案内◇

演題 兵庫にあった国境・赤石櫛渕 講師 梅村伸雄 会員 日時 平成20年3月2日(日)13:30より15:00頃まで 場所 兵庫県民会館 304号室 JR・阪神「元町駅」の山側、徒歩7分。地下鉄「県庁前駅」1-2出口 参加費 500円(申込み不要・自由参加) 主催 兵庫歴史研究…

(154)ホームレス平家のスタート

阪本信子 会員 都を捨てた平家がアテにしていたのは九州でした。 九州を金城湯池と考えたにはそれなりの理由があります。 清盛の祖父正盛が九州皇室領の荘官として赴任以来、西の平家として権力を広げ、父忠盛も九州鳥羽院所領神崎の別当として、宋との密貿…

(153)今も宝剣は海底に

阪本信子 会員 後白河法皇はしたたかに占いを利用し、高倉天皇の四宮尊成親王を天皇にしました。 とにかく寿永二年八月二十日、後鳥羽天皇践祚により皇位継承問題は一抹の後味の悪さを残して落着した。 ここに二人の天皇が並び立ち、「天に二日あり」という…

(152) 占いは三度目の正直?

阪本信子 会員 安徳天皇が平家と共に京を出て西へ去った後、新天皇を立てることに決まりましたが、誰にするかが次の問題です。 高倉天皇の皇子のうち京に残されていたのは三宮と四宮の二人でした。後白河法皇は四宮を望まれていたのです。 しかし、公平を示…

(151) 神の心は権力者の心

阪本信子 会員 公卿会議での新天皇擁立についての論議は茶番、見せ掛けであり、後白河法皇の計画実現への手続きに過ぎませんでした。 しかし、念には念を入れて公平に見せかける為に神祇、陰陽寮で占わせ神のご意志を問うという一幕を演じています。 しかし…

(150) ご都合次第の前例主義

阪本信子 会員 平家が安徳天皇を連れ、三種の神器を持って京を出たため、困った問題が起きました。 「天皇不在の都は都に非ず」と言う認識があり、又、法皇の権威の裏づけとなるのは天皇の権威であることからも、早急に何とかせねばなりません。 平家が意図…

(149) 性格ブスの美女、京都

阪本信子 会員 平家の手から比叡山に逃れられた後白河法皇は、ただちに平家追討の院宣を義仲に与え、義仲は意気揚々と荒れ果てた都に入りました。 義仲の入洛は平家が都を出ていった3日後でした。 この頃京は飢饉で餓死者も多く、平家がいなくなっては無政府…

(148) 都落ちの結びは文句なしの美文

阪本信子 会員 平家が到着した福原の旧都は荒れ果て、かつての姿はありません。これは平家自身の今の姿でもあります。 平家一門が都を発つ時はあわただしく、感傷に浸る暇はなかったが、ここ福原では名残を惜しみ、昔を回想し、行く末を思いやり涙にくれまし…

(147) 「文弱だから負けた」は結果論

阪本信子 会員 大体歴史を見て、滅び行くものは大方優雅文弱の徒であり、代わって台頭するのは、大よそ粗野にして意欲的な人物ということになっている。 都落ちのエピソードは種々書かれているが、一首の歌に生涯の面目をかけた忠度、名器の世から失われるの…

(146) 皆で渡れば地獄も怖くない

阪本信子 会員 都を落ちた平家は先ず福原に着きました。 ここで宗盛が皆に言った言葉は、確かに条理は尽くしているとはいえ、愚痴か泣き言に聞こえます。 たとえ空元気のウソ八百でも、こういう時は士気を鼓舞し、勇気付け、自信を持たせる為に威勢のよさが…

(145) 官僚の処世術

阪本信子 会員 勅撰集の撰進を拝命した俊成のもとへは、自薦他薦の歌がひきもきらず持ち込まれ、入選希望者からは沢山の贈り物も届けられていたでしょう。 こんな時に平家都落ちとなりました。 「平家物語」には忠度のエピソードが載せてありますが、私家集…

 ◇2月例会のご案内◇

演題 神戸・福原遊郭の成立と展開 講師 人見佐知子 先生 日時 平成20年2月10日(日)13:30より15:00頃まで 場所 兵庫県民会館 1202号室 JR・阪神「元町駅」の山側、徒歩7分。地下鉄「県庁前駅」1-2出口 参加費 500円(申込み不要・自由参加) 主催 兵庫歴史…

(144) 歌の世界も俗臭紛々

阪本信子 会員 平忠度は都を出るにあたり、師事していた藤原俊成が当時勅撰集の撰進を命じられていた為、自分の歌を一首なりとも入れて下さいと歌集を託して西へ去りました。 あの当時の人にとって勅撰集に自分の歌が入るということが、どれ程名誉なことか。…

(143) 朝敵はそんなに悪いの?

阪本信子 会員 残念ながら、平家の貴族化は進んでおり、平治の乱以来の平家繁栄の中で、戦いの経験者は少なくなり、生まれながらに貴族文化の中で育ち、文化教養面では平均水準以上の優れた人物が輩出していたと思います。 貴族たちは文の占有者は自分達だと…

(142) 妻子同伴で戦えますか?

阪本信子 会員 数ある妻子の別れの中で、作者が特に維盛の場合を取り上げたのは、後に維盛が熊野沖で入水自殺する原因が妻子への煩悩、妄執によるものと考えているからで、その為には彼の家族愛を特記する必要があったのです。 戦乱というのは生木を裂くよう…

(141) 都に残りたい妻

阪本信子 会員 都落ちの時、平家公達の中には妻子を同伴するものもあり、また残してゆく者もいました。「平家物語」では残し組の維盛について妻子との別れを長々と語っています。 彼は25歳、宮中でも大評判のイケメンで、その容姿は「建礼門院右京大夫集」の…

(140) 別れは幸福へのスタートかも

阪本信子 会員 宗盛は7月23日全軍に引き上げを命じました。口上は「京で戦う」というものです。 しかし、京は攻めるに易く、守るに難しい地で、何箇所もある出入り口に兵を配するとしたら、どれだけ多くの兵員を要するか、現在の平家では迚も無理です。 宗…

(139) 一世一代の決心も宗盛らしい、都落ち

阪本信子 会員 木曽義仲、近江に至るとの報に足元に火のついた平家の驚き、慌てぶりは当然ですが、都中パニックになり、一寸した噂、風聞がそれを加速させます。 伊賀、丹波、淀、宇治からは反平家勢力が迫るとの報に、作戦会議を開いても肝心の兵力が集まら…

(138) 捨て身戦法も役立たず

阪本信子 会員 平家は出来るだけの事はやったと思いますが、落ち目の風速は止めようもなく、恥を忍んで比叡山へ支援を乞うても、かえって足元をみすかされ、憐れみを買っただけでした。 驚いたことに、この時申し出たのは「平家の氏神を厳島神社から日吉神社…

(137) 二代目は辛いね

阪本信子 会員 日本歴史上、大氏族の滅亡は多々ありますが、ワンマン・カリスマ指導者によって短期間の間に覇権を手にした政権は、往々にしてその指導者の死をもって崩壊現象を起こしています。 織田家、豊臣家、平家しかりですが、武田家もその部類に入るで…

(136) 信子随筆 「命あっての物だね」

阪本信子 会員 瀬島龍三氏の死去が伝えられた。 山崎豊子さんの「不毛地帯」「沈まぬ太陽」の主役は彼をモデルにしたということでも有名ですが、一方ソ連との停戦交渉のとき、日本人捕虜の使役などについて、ソ連に有利な密約を結んだとの疑惑もあり、評価相…

 ◇11月例会のご案内◇

日 時 平成19年11月4日(日)13:30より15:00頃まで 場 所 兵庫県民会館 304号室 JR・阪神「元町駅」の山側、徒歩7分。地下鉄「県庁前駅」1-2出口 演 題 近代水産業と神戸 参加費 500円(申込み不要・自由参加) 講 師 旧居留地研究家 桂川幸治氏 問合せ 078…