(159) 神様でも時勢には勝てません

                         阪本信子 会員
 盛者必衰は平家のみでなく、平家によって栄えていた者が共倒れになったのは当然です。
 宇佐八幡宮もそれで、九州において平家が最も頼りにした大勢力でした。
 大宮司宇佐公通をはじめ上層部は平家に協力したいのは山々でしたが、宇佐八幡宮の機構は朝廷に倣い、自分自身の兵力は持たず、所有荘園の兵力に頼るという他人任せでしたから、今の状況を見れば平家に味方できないのは当然でした。
 しかし、今まで受けた平家の恩義を考えれば、すげなく断るわけにも行かず、知恵を絞った妙案が神様のご託宣です。
 当時、この手法は最も普遍的にして有効なもので、神仏の御心と言われれば、異論を唱えるものはいません。
 結果を見ると、宇佐八幡は実際に平家の為に何もしていません。それにはこのようなご託宣があったからかどうかもわかりませんが、少なくとも平家物語を享受する者たちには納得できる理由です。
   世の中のうさには神もなきものを
     なに祈るらむ 心づくしに
 (世の中の辛い事には神は何の助けもできないが、そのように心を込めて何を祈っているのか)という、まことに素っ気ないご託宣で身も蓋もありません。
 損をするのは人間は勿論、神様でも嫌なんですね。(つづく)