(166) 信子随筆 国家の威信は守られたか

                         阪本信子 会員
 この度の聖火リレーにしても、沿道を埋める中国国旗をみて、善意に考えれば、彼らの愛国心の発揚ともとれますが、見物に訪れた人が肝心の聖火を見られなかった、と聞くとオリンピック狂想曲に踊らされている彼らに国際的な相互理解の難しさを感じています。
 しかし、「現在日本人が日の丸のもと、一致団結して熱狂できるのはオリンピックで、君が代を聞いて感動しない日本人は殆どいない」というのはほぼ当っています。
 無視しようとする私でも、ついテレビ、新聞に目をやってしまいます。
 現在のスポーツは「国際スポーツ」と「民族スポーツ」に分かれています。
 後者の場合、内部に少数民族を抱える例えば中国のような多民族国家は、これを機会に「国家意識」を統一し、高めようという意図が働きます。
 しかし、21世紀になると既に少数民族は自らのアイデンティティを持ち、今回の騒動は中国政府の意図に反して裏目にでた結果です。
 しかし、日本だけでも3000人の警備を動員してまで守ろうとした国の威信を、中国は金メタルの数で完璧に繕うことが出来るとでも思っているのでしょうか。
 せめて「スポーツに国境は無い」という虚言はやめてもらいたいものです。(つづく)