(162) 信子随筆 オバカさん番組はもう沢山

                         阪本信子 会員
 昭和二十年代は週刊朝日の全盛時代で、毎週何十万部も売れていました。
 その頃の編集長は「読者を旧制高等女学校二年程度の教養を持ち、主婦経験十年ほどのレベルと考え、彼らが理解できない記事は全て没にせよ」と指示したそうです。
 その頃の一般的庶民教養のレベルはその程度と判断していたのでしょうが、それに至らぬ人でも、見栄をはってそのフリをし、「読みもしない」世界文学全集や「読めもしない」ブリタニカなどを本棚に飾る「いじらしさ」「かわいらしさ」がありました。
 大学進学率は低かったけれど、明らかに昭和は現在よりも人間の文化度は高かったと思います。
 今はどうでしょうか。
 たとえ大学を卒業していても、中学程度の教養しかない人間がうじゃうじゃいます。
 しかも、それを隠そうともせず、恥とも思わず、字を書かせると誤字だらけ、電車内ではマンガを読み、携帯に熱中し、化粧する女性を見ては母親の顔が見たいと思う、歎かわしい限りの世の中です。
 といってたしなめる勇気もなく、いらいらして電車に乗っている私も、大人としての失格者ではないかと思うのですが。
 テレビのオバカさん揃いのクイズ番組をチラチラ横目で見ながら、突然「バカモン!」と叫ぶ私は異常なのでしょうか。 (つづく)