(123) 信子随筆 「日本はまだ後進国です」

                              阪本信子 会員
 日本の産業技術は先進国レベルでしょうが、政治における後進性は目を覆うばかりで、社会保険庁に至っては暴動にもなりかねないほどの大問題でありながら、役人の無責任に対する日本人の忍耐力に感心するというより、呆れています。
 効き目があるなら、社保庁の役人を丑刻参りで呪い殺したいくらいですが、そんな役人をのさばらしたのは、我々国民にもその責任の一端はあると言われます。
 強大な公的権威、権力は明治以来衰えず、にも拘らず役人の能力は未開発国レベルであった、それに気づかなかったのは国民の罪であると言われれば、そうかもしれません。
 「清く正しく美しい」社会は理想でしょうが、世の中の人全てが「清く正しく美しい」人でない限り机上の空論にすぎません。
 今日この頃、歴史を見て感ずるのは、政治とはより悪い奴の成功率が高いような気がします。ずぶとさ、悪知恵に長け、冷酷、良心の呵責のなさ、それを隠し通せる腹黒さが必要ではないか。残念ながらそう思わざるをえないのです。
 国民的英雄として人気のある楠木正成、阪本竜馬、源義経、私の好きな源義仲、彼らが好まれる美点は何ひとつ覇を制するには役立たず、かえってマイナス因子になっています。
 家康が信長、秀吉の後に天下を掌握できたのは、彼が二人より悪人度が高かったからに過ぎないと私は思っています。(つづく)