(99) 畳の上で死ねない悪人?

                              阪本信子 会員

 「玉葉」において兼実は清盛の死について、「彼のやったことから考えると、敵に殺され首をやり先に懸けられ屍は戦場に曝される筈なのに、病気で死ぬとは運の良い男だ」といっています。しかし、清盛は今平家存亡のとき、戦場に敵と戦って死ぬ方を選びたかっただろうと私は思うのです。その思いを漢詩に託しました。



平 清盛       阪本信子

六十四年今風前 六十四年今風の前  
求道声絶南都炎 求道{くどう}の声絶ゆ南都の炎
東夷北狄中干戈 東夷北狄干戈の中
怨嗟満世治承変 怨嗟世に満つ治承の変
我生涯聊無愧処 我が生涯聊かも愧ずる処無し
庶我提剣立戦場 庶{ねがわく}ば我れ剣を提{ひっさ}げて戦場に立たん
望只平家永迎春 只望む平家の永{とこしな}へに春を迎うるを
残念神龍昇雲上 念{おもい}を残し神龍雲上に昇る