(16) 貴族に妬まれた平家繁栄
阪本信子 会員
現代人から見ると、貴族といえば一括りでハイソサェテイと認識していますが、これにはピンからキリまであり、ピンの方は摂政、関白、大臣、納言、参議で公卿といわれ、今風に言えば閣僚クラスで、これにはそれ相当の家柄、血統が必要で、本人の努力、能力の及ばないところでした。
そういう人達も含めて貴族たちの名誉欲、プライドを満足させる別の序列が作られました。公卿にはなれないが、せめて天皇の御座所近くに上がれるという特典で、それが昇殿制といわれ殿上人と地下人に+区別されました。
殿上人は院政の時代になるとその数は増大してゆきますが、これは治天の君、法皇、上皇の恣意次第で、それほどでない家柄の者でも昇殿の許しが与えられるようになったからです。
中下流の貴族にとって今までは高値の花と諦めていたのに、それが可能となったのですから、ここに新しく大競争時代が始まります。
ところが、同僚にさえ先を越されるのは癪に障る事なのに、今まで自分達に随う身分と考えていた武士、忠盛がそれを手に入れたのですから、我慢できません。
こうなれば、貴族同志一致団結して異分子排除を計画しました。
職場での男の嫉妬は女以上です。これが平家物語の「殿上の闇討ち」という事件です。 (つづく)