(12)死刑復活

                                  阪本信子 会員
http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050416 からの続き
平家繁栄のきっかけになった保元の乱で死刑が復活した、と貴族たちは騒然となりました。
 350年前「薬子の乱」の時、薬子の兄藤原仲成が死刑に処されて以来、表向きには死刑は実施されておりません。
 ただし、正確に言えば荘園、国衙領では私的制裁は日常茶飯事で、残酷な処刑が行われており、「死刑が行われなかった」とはおこがましい言い方です。身分の低い庶民には関係のない特典でした。
 しかし、上辺だけにせよ公的に約350年間死刑が行われなかったのは、世界では例のないことでした。
 当時の日本人は怨霊の存在を信じ恐れていました。一方、反逆罪で罰せられる場合、殆どがでっち上げであり、権力者は処刑する人の怨霊化を恐れ、自分のために死刑にしなかっただけのことで、人権尊重とか、命の大切さを知っていたという上等なものではありません。
 そして、保元の乱の戦後処理で死刑を進言した藤原信西が、3年後の平治の乱源義朝によって先ず血祭りにあげられ、非業の最期を遂げたのは、死刑を復活した報いだと、平家作者はコメントしています。
 なんでも因果応報的に纏めようとする作者らしい結論ですが、みせかけの死刑廃止が仮面を剥ぎ取られ、実像を見せ始めたに過ぎない、自然の成り行きだとと思っています。
              (つづく)