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                               阪本信子 会員
平家物語は平家の歴史を記したものではなく、あくまでも平家の物語なのです。
 しかし、これを歴史、史実として読む人が多かったのは確かで、平家物語から派生した多くの史跡がそれを物語っています。
 伝説、伝承に関しては、その莫迦ばかしさを笑うことは簡単ですが、その中に日本人のメンタリティーや智恵が隠されているとすれば、それはそれなりに研究材料として貴重な資料といえます。私の平家物語はアラ探しに始まったのですが、これも平家物語研究の一手段で、一分野、一視点に過ぎないのであり、決して自論の正当性を押し付けるものではありませんが、現代人が平家物語に面白さを感じる糸口になればと思います。
 しかし、史実とは何かを考える時、事実の叙述が真実の叙述とは限らず、十人の記録があれば、十個の真実が存在すると考えるべきです。同じ記事を書いても新聞によってニュアンスが異なるように、書く人の主観を全く含まないというのは不可能です。
 私の場合、主観をメインにして平家物語を講じていますが、それがどれだけの人に共感を与えられるかが肝心です。
 英雄が凡人になり、悪人が善人に、気の弱い人が強気な人に、賢い人が実は愚かであったなどと、今までの認識にこだわらず、登場人物を俎上にのせて料理する楽しみを味わっております。
 一度、私の話 http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050127 を聞いて下さい。
http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050213(へつづく)