(2004/12)

◇2004年12月例会の案内◇
日 時 12月5日(日)13時30分〜
会 場 兵庫県民会館1202号室
演 題 女たちの大英帝国
      ―植民地経験のゆくえ―
参加費 五百円
講 師 甲南大学英文学科教授
         井野瀬久美恵 先生
本年、先生の著書 『植民地経験のゆくえ』が女性史・青山なを賞を受賞されました。
「慈悲深き大英帝国」という植民地郷愁に捉われず、百年前に植民地アフリカを旅した二人の女性の経験を通じて、大英帝国とは何だったのかを考え直してみたい。
尚、終了後先生を囲んで茶話会を用意しております。現代人の貴方にも心に残る集いとなるでしょう。是非参加してください。

↓---------------------------------------------------------
(著書『植民地経験のゆくえ』が「女性史・青山なを賞」を受賞)
 アフガニスタンイラク戦争以後、アメリカを「帝国」として読み解く昨今の国際情勢によって、「帝国だった過去」をもつイギリスでは「大英帝国とはなんだったのか」を再考する動きが加速化された。その背後には、EUの拡大・統合と相まって、ブレア政権が実行した地方分権化(=内なる解体)が進展するなか、
「イギリス人 Britons/ the British」というアイデンティティの動揺が指摘されている。オクスフォード大学教授ニオール・ファーガソンの著作『帝国』の爆発的な人気は、このイギリス人のアイデンティティ・クライシスと深く関係する現象と思われる。
 とはいえ、ファーガソンはもとより、帝国だった過去を積極的に評価しようとする昨今の議論の多くは、帝国の中心=イギリスが、帝国の周縁=植民地に何をしたのかという点にもっぱら着目しており、その延長線上には、(おそらく「デモクラシーの帝国」アメリカとの対比から)「慈悲深き大英帝国」という植民地郷愁が再生産されている現状ばかりが目につく。
 本日は、こうした植民地郷愁に絡めとられず、「帝国だった過去とは何だったのか」を再考するために、今から百年ほど前に植民地アフリカを旅したひとりの女性と、彼女の後見人を自認する歴史家未亡人という二人の女性の植民地経験に着目する。それによって、「中心から周縁へ」というベクトルの方向を逆転させ、周縁が中心をどう変えたのかという視点に立つことで、大英帝国という空間の歴史にどのような書き直しが可能になってくるか、考えてみたい。
↑---------------------------------------------------------