(135) 信子随筆 「昨日のペット、今日は凶悪獣」
阪本信子 会員
現代では普通の人がとんでもない犯罪をおこしています。
その原因を社会のせいにする人もいます。それはある程度は肯定しますが、やはりその殆どは彼自身の責任に負うところが大きいと思います。
カミツキガメの凶暴性も彼自身の性格に帰するといえば身もフタもありませんが、三十数年前は何の警戒感ももたれず上野動物園の水族館ではカメ池で二十数種のカメと一緒に飼われていました。
十数年間は何の変事もなかったのですが、昭和56年6月異変がおきました。5日に一度のエサやりの直前の空腹時に、カメ池のカメが次々と首を食われるという殺傷事件です。
犯人はカミツキガメとわかり、3匹を隔離してカメ池の平和は回復しましたが、それ以来カミツキガメは悪者のレッテルを貼られ、見つけ次第隔離されています。
現在、熊や野犬、猪などが凶悪犯罪の主役になり、可愛らしい保護鳥、保護獣ですら邪魔者になっています。それは彼ら自身の責任に帰するものではなく、人間社会が変化したからです。
一見人相(?)も素行も悪いカミツキガメが人間社会に仇なすものとして排斥されるのは仕方ないことですが、人間の方が凶悪になっていると彼らは歎いていることでしょう。(つづく)