(10)武者の世

                                  阪本信子 会員
http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050404 からの続き
 保元の乱より後「武者の世」が始まったといわれています。
 この戦いは崇徳上皇とその弟後白河天皇の勢力争いに端を発し、藤原摂関家、平家、源氏が夫々二派に分かれ、天皇方もしくは上皇方について争ったというお家争いの四重奏です。
 特記すべきは、この時の戦場は京都だったことです。
 これまでの戦いは東北では将門の乱、前九年の役後三年の役、九州では純友の乱など何れも辺地の出来事でした。
 今風の感覚からすれば、アフリカよりももっと遠い所での戦争くらいにしか考えられなかったでしょう。
 貴族たちは自分たちの生活レベルがダウンしないなら、どこで戦いがあろうとも百年でも辛抱します。
 つまり戦争というのは、自分たちに関係のない者が、関係のない所でやるものと思っていました。
 しかし保元の乱以来、天皇のいる京都は絶対に安全であるという神話は一ぺんに吹き飛びました。
 僅か3〜4時間の戦いでしたが、目前で人が死に血が流れ、敗者は権力も財産も命さえも失ってしまう、武力の威力、恐ろしさを認識しました。
 しかし、認めざるを得なくなったとは言え、貴族にとって武士は異次元の存在で、仲間にはしたくない人種に変わりありません。清盛が朝廷において行動することの難しさがそこにありました。