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http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050116(からの続き)

 平家物語について第1回は少々小難しいことを申し上げましたが、要するに800年以上にわたって愛されている秘密を探り、難しく言えば日本人というアイデンティティを確認したいということ、ざっくばらんに言えば「今の世の中何とかならないか」ということになります。

 勿論、平家滅亡、源氏台頭のあの時代をそっくりそのまま参考に出来る筈もないのですが、日本人の思考方程式、思考回路はあまり変わっていないように感じます。

 これがいわゆる歴史的常識といわれるものです。

 平家物語は聴衆の要望への対応度が高かったというのも、長年ご愛顧の原因の一つですが、それ以上の魅力は分かりやすいということです。

 王朝文学はある程度の教養知識を必要とする難解な文章ですが、平家物語は耳に快い七五調で、これは悲しみ、詠嘆の表現には相応しく、古今集以来現代の演歌に至るまで、日本人の好きなリズムです。

 何故か人間は他人の幸せより不幸な話のほうがお好きのようです。

 七五調で綿々と語られると、幸せな話も何だか陰々滅々な話になってきて、平家の繁栄を表す部分も滅亡が暗示され、(まさしくそれは真実なのですが)平家物語が平家の滅亡を語っているのなら、源氏の繁栄を書いてもよさそうなのに、それを感じさせないのはそういう文体によるものです。

http://d.hatena.ne.jp/hyogorekiken/20050130(へつづく)